あるとき新しい快感が欲しくなってSM的な妄想をするようになった。バラ鞭とか麻縄を買ってきて、それで自ら女性を痛い目に遭わせるシーンを妄想してオナニーしたりした。SMへの興味はある日突然やって来るものだ。その意味では誰でもSMプレイヤーになれる。
そして本当に女性とSMプレイをしてみたいと思い、出会い系ハッピーメールに登録した。出会い系では自分の性癖にぴったり合う女性を探せるという。SMプレイをサービスする風俗店は高すぎるので、俺には出会い系しかなかった。
ソフトSMを経験したことのあるという女性に出会った。アパレルの店員をしているという26歳のOL。少々子供っぽいところがあり、甘え上手という印象がある。自称ドM女子と彼女は自己紹介した。
「これからホテルで縛ってもいいかな」
「うふふ・・・唐突に何を言うかと思ったら」
「SM初めてだから切り出しかたがわからなくて」
「まあいいわ。行きましょう」
全裸の彼女に持参した麻縄を巻き付けた。両手を胴体に固定するだけのオーソドックスなものだが、粗めの縄が白い肌に食い込むのを見て興奮。しかし彼女は平然としている。
「痛くないの?」
「ちっとも」
俺はさらにきつく縛った。全身の力を込めて縛り付けた。するとさすがと表情をゆがめた。腕に巻き付いた縄を少しずらすと、赤く充血している。
「痛い?」
「うふふ・・・SMプレイではね、いちいち相手に痛いかどうかなんて聞かないのよ。痛くて当たり前なんだから。でもこれが気持ちいいんだから」
彼女は恍惚とした顔をしている。
これがドM女子の姿か。これがSMプレイか。
それまで漠然と認識していたに過ぎない「苦痛 = 快感」という図式を俺は目の当たりにした。本当にこんなプレイがあり得るんだな、と改めて思った。
それは本当の意味で俺がSMプレイに覚醒した瞬間だった。
彼女からはいろいろ教えてもらっている。ドM女子からは学ぶものが多い。