SMプレイをビデオで観ると、たいてい鞭が登場してくる。
あのピシッ! という音を聞くとなぜか興奮してくる。自分も体験してみたいと思う。叩くより、叩かれたい。俺はM男なのだろうか。通販でバラ鞭を買い、自分で自分を虐めるもあまり感じない。鞭プレイは人から叩かれてこそ快感になるのだと知る。
俺は自分を叩いてくれる女性を訪ねて出会い系を歩きまわった。最近の出会い系サイトでは、性的嗜好に応じて相手を選べるシステムが提供されているが、初心者なのでプロ級のS女相手にプレイする気にはならない。できればSM素人に近いほうが望ましい。でも完全に素人だと鞭を見ただけで引いてしまうだろうから、人妻にターゲットを絞った。人妻なら経験豊富で性的な柔軟さがあり、鞭プレイにもすんなり入れるだろうと踏んだのだ。
見つかった女性は36歳の人妻。美人だがどことなくお高く止まった女性だったが、連絡したら会ってくれることになった。
「初対面ですけど、即エッチどうですか」
と誘ったら、二万円欲しいと言う。
「割り切りか・・・割り切りする人妻が増えてるというのは本当なんですね」
「不景気だから仕方ないわ」
「では三万払いますから、僕のお願いを聞いてくれますか」
「え? 三万? なになに? 何すればいいの」
「鞭で叩いてくれますか」
するとお高く止まってツンとした表情がくずれ、にこやかになった。
「あらら、それ系の人なのね」
珍しいものを視るような目で、俺を改めて見る。
「いいわ。叩いてあげる」
用意した鞭は「一本鞭」と「バラ鞭」だ。バラ鞭は革製の8条。
ベッドに座り、しげしげと鞭を眺める人妻。
「SMの人に会えるなんて光栄だわ」
「奥さんは興味ないんですか」
人妻と話しながら服を脱ぐ俺。奥さんもそれにつられるようにワンピースを脱ぎだした。
「興味なくはないけど、やってみようとは思わないわ」
「僕はこの鞭で新しい世界に踏み出すつもりです」
素っ裸の俺はベッドの上で四つん這い。パンティ一枚の人妻は一本鞭を持ってベッドの横で仁王立ち。
「それっぽいせりふを言ってから叩いてください」
「せりふ?」
「女王様的なお言葉をちょうだいしたいです」
人妻はしばらく一本鞭をふらふらさせながら考えている風だったが、大きめの声でこう言った。
「人妻をねめんじゃねえ!」
そして一本鞭を振り下ろしたのだ。
バチッ!
「痛えええ」
思わず身体を反転させ、叩かれた部分を撫でた。背中から尻にかけて、みずばれのような跡が付き、痛くてしかたない。
「ごめんなさい・・・ついつい・・・だいじょうぶうう?」
後から調べたら、一本鞭は上級者向けで、S側の立ち位置や叩き方も工夫しないと大けがにつながるらしい。素人が簡単に手を出せる鞭ではないので要注意。
「今度はこっち」
バラ鞭に変更。
こちらは痛くなかった。もちろん強くたたけば痛いが、女性の力で普通に叩く分には問題ない。
女性から鞭で叩かれているというシチュエーション事態に興奮する。その痛みが、女性の力により引き起こされているのだと考えると興奮する。
しばらく叩かれながら勃起状態に陥ると、人妻をベッドに引っ張りこんでセックスした。
一回目の射精のあと、なにげにバラ鞭で人妻の尻を叩いてみる。
「いやぁーーん・・・・もう・・・」
瞳をとろんとさせる人妻。
「もしかして、鞭が好きか?」
「かもね・・・・今の、何だか感じちゃった」
それから人妻にバラ鞭攻撃をしたよ。
割り切りで知り合った人妻だけど、それから定期的に会うようになった。
今やバラ鞭でお互い調教し合う関係だ。