人は人から愛されるほうが嬉しいに決まっているのに、僕の場合いつからそうなったのか、嫌われたり冷たくあしらわれたりするほうが嬉しいみたいです。
特に好きな人から痛い目に遭わされるのが好きなのです。じんとくるのです。そういう意味では嫌われているほうが「愛されている」快感を得ることができるとも言えます。そのことを僕の中では「Mの快感」と呼んでいます。
今交際している(交際していると思っているのは僕だけかもしれませんが)女性は2歳年上のOLですが、僕に冷たくあたります。
「だから君とは普通の友達でいようって言ったでしょう」
「友達・・・ってことは、えへへへ、フレンドか・・・てことはセックスフレンドにもなれるんだね」
「馬鹿」
いつもこんな感じです。
でもこの程度では「Mの快感」は来ません。もっと痛烈な責めが必要なのです。
「今日はもう解散しようよ・・・私はこれから用事があるから」
「一回だけセックスさせてもらったら解散してもいいよ」
そう言うとふくれっ面をし、目をマジにつり上げて怒ります。
「いい加減にしないと怒るよ」
「怒った顔が美紀さんらしくて綺麗ですね」
「死ね」
死ね・・・。この最高に人を侮辱する言葉。人はその言葉によって精神的に死にます。でもこの言葉が僕の性感帯中枢に心地よく刺さるのです。
―ああ、来た来た! Mの快感が来た―
もっと言ってほしい。死ねだのクソだのクズだの、徹底的に罵ってほしい。貶されたら貶されるほど、僕は気持ちよくなるのですから。綺麗で好感を寄せる女性から言われる痛烈な罵言は、僕にとって最高の快感材料なのです。
「一回だけね」
それは昨日のことです。彼女がやっとセックスOKと言ってくれたのです。
セックスのときも彼女は僕への中傷をやめませんでした。
「君みたいなスケベ男を相手にすんのは今日が最後だからね。だいたい君みたいなどうしようもない男が私につきまとうなんて1000年早いんだよ」
「言ってください・・・・言いたいこと全部言ってください」
そう懇願しながらセックスします。
彼女は僕を罵りながらも女の快感に浸っていきます。
彼女ももしかしたら「Sの快感」を得ているのかもしれあません。
本当に嫌だったら、絶対に会わないだろうし、ましてセックスなんてさせてくれるわけがないですからね。