祥子はのほほんとした表情をして、SMとは縁のなさそうな顔をしていたが、実はM女であることを俺は知っていた。掲示板には「乱暴されて迫られる夢をたまに見る」と書いてあったからだ。隅っこに目立たない感じで書いてあったので、斜め読みしたらまず見逃す。俺も危うく見逃すところだった。彼女も俺がそれを読んでいないことを前提に付き合っている風だった。
「乱暴されたいんじゃないの?」
「ええ? なんで知ってんの?」
「プロフに書いてあったじゃん」
面はゆそうな目をして、下唇を噛む。その唇が可愛いらしかったし、エロくもあった。俺は祥子を虐めてみたいと思った。
「ドライブ行こうよ、目隠しして」
「やだ……目隠しなんて」
「乱暴されたいんだろ」
「目隠しって乱暴かなあ」
「静かな乱暴だ」
少々揉めたが、祥子はその乱暴を楽しむことを約束した。
それはSMプレイで俺がよくやるプレイだ。女に目隠しをして車で連れ回す。目隠ししたまま暗黒のなかを連れ回すのが目的だから行き先はどこでもいい。観光地に行くもよし。高速をひたすら突っ走るもよし。それこそ同じ道を行ったり来たりしてもいい。俺は特に目的もなくエンジンをかけてアクセルを踏んだ。
隣の祥子は無口でじっとしていたが、さすがと辛いのか、ときどき首を振ったり、唸ったりした。
「お願い……外の様子を教えて。何が見えるとか、車が多いとか、人が走ってるとか」
「だめだ……目隠しをしている以上、外界との交流は遮断されて当たり前……ひひひ」
「そんな……なんだか怖い。何も見えないし、耳に入ってくるものは車の音だけだし」
「退屈なのか」
「そんなレベルじゃない……」
体験したことがないからわからないが、人間は時間の経過を視覚、聴覚で把握しているのかもしれない。目が不自由な人は聴覚が健常者よりも発達しているので、聴覚だけで時の経過を把握できる。耳が不自由な人はその逆だ。祥子のような健常者は、そのいずれも無理。暗黒の中で右往左往するしかない。
そこが濡れていたことは、一日の締めのカーセックスをしたときにわかった。
おもらししたようにパンティが濡れ、そのお汁はストッキングにまで及んでいた。
セックスしているとき、彼女はようやく自分と外界との繋がりを取り戻した。ま○こが受ける快楽によって、時間の経過と自己の存在を見いだしたのだ。
何やら難しい体験談になってしまったが、目隠しプレイには深いものがあることをご理解いただきたい。